2011年10月25日火曜日

ソフトバンクのiPhone(スマートフォン)戦略とWiFi戦略

以前ソフトバンクのスマートフォン戦略の記事を書いたが、TD-LTEに関しては未だ未実現となっているが、WiFi戦略がかなり浸透していきているので、再度言及したいと思う。
http://lteltelte-lteworldsituation.blogspot.com/2011/02/blog-post.html
※ ソフトバンクHPから引用


私自信iPhone4Sを現在使用しているが、ほとんど3Gの回線は使用していない。というのも、WiFiルータを所有していることもあるが、駅や店などでは、ほとんどソフトバンク系の無線LANが無償で使用できるからだ。

現在ソフトバンク系の公衆無線LANは、
・ 以前からある「mobilepoint」のネットワーク
・ 最近拡充されている「0001softbank」のネットワーク
・ FON
と三種類ある。FONはスペインが始まったみんなで無線LANネットワークを共有しよう、というコミュニティで日本でバッファローがやっているFreeSpotに似ている。ただ、その普及は桁が違う。ほぼ全世界で普及している、という代物だ。

日本でもFONジャパンが立ち上がりgoogleやインターネットプロバイダのエキサイトなどが出資している(http://www.fon.ne.jp/)。

以下のルータを納入し、一部一般にネットワークを開放することで、代わりに様々な場所で無線LANが使用できる権利を得るわけだ。



一見ソフトバンクとは関係ないものだが、ソフトバンクからこのFONルータを無償提供し普及の促進に一役かっている状況だ。

ソフトバンクは今年9月に、10万箇所の無線LANアクセスポイントが設置されたことをニュースリリースしている(http://www.softbankmobile.co.jp/ja/news/press/2011/20110929_04/)。

そして現在も公衆無線LANエリアを拡大すべく、法人・店舗にはWiFiルータを無償提供している(http://mb.softbank.jp/mb/special/network/sws_router/)。


これは、現代のスマートフォン時代、キャリア会社としては、極めて、極めて賢明な判断だと思う。つまり、ソフトバンクはWiFiエリアを拡充し、セルラ3G回線の通信負荷を劇的に下げているのだ。

3Gのインフラ整備と無線LANのインフラ整備。その費用には雲泥の差があることは明らかだろう。しかも、スマートフォンは、3G回線、無線LAN回線を意識せず、通信が行える。しかも、積極的に無線LAN回線を使用して動作するので、キャリアの設備投資費も下げる格好となる。

ユーザも3G回線を使用し、課金量を増やしたくない。キャリア側も整備コストの高いセルラ回線はあまり使用して欲しくない。この『公衆無線LAN』普及ソリューションはまさにユーザとキャリア会社のwin-winを実現するものなのだ。


WTOが予測するには、世界はどんどん都市化していくようだ。つまり、人口密度が高いところはもっともっと将来高くなる、ということだ。こういった高い人口密度のエリアは無線LAN、そして郊外や移動速度の早い移動体に乗っている時はセルラ回線、というように自動的に切り替えるソリューションが今後のキャリア会社には重要になってくるのであろう。

現在海外のキャリア会社の多くは、設備投資費用に見合わない、という理由から定額料金をどんどん止めているが、これはややもするとLTEを含めたセルラサービスの衰退を招きかねない。やはり、セルラも安心して使える、定額料金にして、実際のデータ通信は無線LAN回線を使用する、というようにサービス提供者が工夫するというのがベストだと感じる。



そういった意味ではソフトバンクのこの事業戦略は「あっぱれ」というしかほかない。私もFONのルータを設置することにしよう。。


2011年10月21日金曜日

ミリ波通信(IEEE802.11ad、WiGig)

近年周波数の枯渇や大容量データ通信の必要性などの理由から60GHz帯のミリ波通信の必要性が叫ばれ、標準化が進んでいる。

主な規格としては、
・ IEEE802.11ad
・ WiGig
・ WirelessHD
・ ecma international
となるが、今回は802.11adとWiGigに関して、その標準化動向や技術内容に関して俯瞰していきたい。

各規格を見る前に、ミリ波の周波数の状況だが、日本でも、以前から特定小電力無線局として59~66GHzが割当てられていたのだが、これを2GHz分拡張し、57~66GHzが使用できるようになった。


こうすることにより、欧州などと歩調がとれ、協調運用が可能だ。これにより、デバイス開発などが容易になる。ミリ波伝送の周波数プランは、国際的に
チャネル1:中心周波数58.32GHz、帯域幅2160MHz

チャネル2:中心周波数60.48GHz、帯域幅2160MHz
チャネル3:中心周波数62.64GHz、帯域幅2160MHz
チャネル4:中心周波数64.80GHz、帯域幅2160MHz
となっており、日本は全て対応出来る形になっている。ちなみにヨーロッパでも全て、北米や韓国はチャネル1~3が対応可能、という形だ。


さて、話を規格の方に戻そう。


802.11adは先の記事でも示したが、11acのミリ波版とも言える方式だ。
http://lteltelte-lteworldsituation.blogspot.com/2011/10/ieee.html

もともと、802.15.3cで規格していたのもを一本化したものと言われているが、シングルキャリア方式とOFDM方式両方をもつ、ちょっと今までにない方式だ。概要とまとめると(あくまでも現時点でのドラフト5.0でのものだが)、

帯域: 2160MHz

シングルキャリアサンプリング周波数: 1760MHz


OFDMキャリアサンプリング周波数: 2640MHz

プリアンブルSync長: コントロールPHY38repetition、
他のMCSでは14repetitiion(Golaycodeを使用)

プリアンブルSFD(start Frame delimiter):コントロールMCSには、128長のGolayシーケンスを2つ、高レートMCSには128長Golayシーケンスを1つ。


プリアンブルCES(channel estimation sequence):128のガードインターバルに続く8つの128長のGolayシーケンス(シングルキャリアでも、OFDMでも同様)が2つ。

コントロールPHY(MCS-0):32 Golay 拡散、Pi/2 DBPSK 、短縮された LDPC コード


OFDM FFT サイズ:512

シングルキャリア変調:Pi/2 DBPSK、Pi/2 BPSK、Pi/2 QPSK、Pi/2 16QAM
OFDM変調:SQPSK、QPSK、16QAM、64 QAM

誤り訂正:リードソロモン 208/224、BC8/16、LDPC 1/2, 3/4, 5/8, 13/16

となる。

また、11adはミリ波なので、どうしても電波の遮蔽が厳しくなるが、これの解決策として11nなどの規格(6GHz未満)への高速ハンドオーバなども機能も有している。


次にWiGigに関してだが、WiGigにはWiGigアライアンスがあり、その業界標準化を虎視眈々と狙っている。WiFiアライアンスとの協業やWiGig仕様の一部IEEE802.15.3c仕様の踏襲、また11adの標準化に寄与するなど、ミリ波通信の業界標準に向けて準備万端といった形だ。

WiGigの一番の特徴はなんといってもIPだけでなく、無線で機器とつなげることができる、ことであろう。ePCIやUSB、HDMIともつながる。そして、これらを柔軟に切り替えるためにプロトコル・アダプテーション層を採用している。PAL層とも呼ばれる。

また、以下のような特徴も見られる。
・ データレート:OFDMで7Gbpsまで、シングルキャリアで4.6Gbpsまで。
・ ビームフォーミング技術の採用
・ マルチバンドオペレーション(2.4GHz帯、5GHz帯との協調運用)
・ 電力制御(2デバイス間で協調し、より低消費電力な形で動作)
・ 高度なセキュリティ機能AES(Advanced Encryption Security)の採用。Galois/Counter Modeの採用。

ミリ波デバイスが安価になってきたことで、このあたりの通信が一気に花開きそうだ。

60GHz帯は無許可で使用できる周波数帯でもあり、帯域が広いことから高スループットの伝送も容易である。最近は既に試作機もでてきている段階にあるが、これらの技術が商品化されたころには、まさにSFの世界のような、リッチコンテンツが楽しめる世の中になっていることだろう。

ストレージ機器、ディスプレイなどとともに、今後もミリ波通信が繰り広げる世界、に関しても継続してウォッチしていきたい。


2011年10月11日火曜日

アマゾンタブレット端末、キンドル・ファイア

本ブログでも予想したように7インチタブレット版キンドルファイアが発表された。11月15日販売予定、ということだ。
http://lteltelte-lteworldsituation.blogspot.com/2011/09/blog-post_19.html

価格も1万5千円程度、とiPadよりもかなり安い。

タブレット端末は様々出ているが、この勝敗を決めるのは、性能でも価格でもなく、コンテンツシステムと言われる。アップルはアップルストアをもち、アプリ、音楽、ビデオなど幅広く販売するシステムをもつ。一方、アマゾンもeコマースの代表格であり、またキンドルでの電子書籍関連販売実績は他を圧倒する。アマゾンはこのキンドル・ファイア用にホームページを大幅改訂している、という噂もあるし、当然、様々なものを販売していくことになると思うので、そういったしくみを作るというのは当然のことだと思う。

日本勢といえば、「アクトビラ」なんというコンテンツ販売システムを共同で作成しているが、これを活用してソニータブレットSまたはPシリーズは、コンテンツシステムを構築していくのかもしれない。

ただ、電子書籍などは日本の法整備などもあり、またまた海外勢と歩調を合わせることができないようだ。日本の常識は、世界の非常識。今後どのように、グローバルスタンダードに適応していくか、携帯電話でも味わったガラバゴス状態にならないように国をあげて取り組んでいかなければならない、問題なのかもしれない。



2011年10月10日月曜日

3500円タブレットPCの登場!!

な・な・なんと、3500円のタブレット端末が登場している。もちろん、無線LANもついており、タッチスクリーン、2GRAM、USBなどもあり十分な仕様である。これを今後は、技術革新を経て、1500円、800円程度まで価格を下げたい、といっている。まさにアンビリーバブルな話だ。


実はこれ、インドの話。インドの学生用に開発されて1500ルビーパソコンだ。

http://www3.nhk.or.jp/news/tokusetsu2011/1007.html

な~んだ、と思うかもしれないが、中長期的には極めてエポックメイキングな話だ。

① この価格でタブレットPCが開発された場合、欧米・日本のみならず、韓国、台湾、中国など全く歯が立たなくなるだろう。
② 数学が得意で、プログラミングなどに長けているといわれるインド人。こういった12億人がまさに最新ITツールを手にした格好だ。現在のIT技術による生産性の向上はまさに青天井で、こういった労働力12億人が新たに世界の産業界に台頭してくる格好だ。その影響は、全くもって予想がつかないほど巨大、と言える。


インドといえば、バールティー・エアテル(Bharti Airtel)がGTI(Global TD-LTE Initiative)に加盟しており、WiFi・TD-LTEのルータなどがでれば、この1500ルビーPCとルータで、どこにいてもインターネットにアクセスできるようになる。

いやはや、グローバル化とデジタル技術はどこまで世界を変えていくのか、末恐ろしい限りである。

2011年10月7日金曜日

iPhone4S、KDDIとソフトバンクでの速度に違いとアップルの対応に関して

iPhone4Sが発表されてから、KDDIとソフトバンクの速度の違いに関しての多くの報道がなされている。ご存知のようにKDDIは、EVDOのRev.Aマルチキャリアを使用しているため、その速度は、3.1Mbpsまでしかでない。一方ソフトバンクはHSPAを採用しているので、14.4Mbpsまででる(ともに下りの速度)。


ここで注意したいのが以下の2点だ。
① ソフトバンクは、どの程度14.4Mbpsの速度がでるのか?どこで?この速度の人口カバー率はどの程度か?
② ソフトバンクは、現状最大42Mbpsの速度がだせるはずだが、iPhone4Sは14.4Mbps止まりなのか?


①に関して言うならば、数字のインパクトはソフトバンクの14.4Mbpsの方があるのだが、ネットワークの評判はやはりKDDIの方が上だろう。

これはカバーエリア(ひょっとしたら、14.4Mbpsは都市部だけ??)やリソースのスケジューリングの問題、また基地局配置戦略などいろいろな事項が絡んでおり、このような評価になるのだろう。

今後は、最大速度だけではなく、サービスの人口カバー率を考慮して、キャリア会社を選定する必要があるのかもしれない。



②に関しては、14.4Mbpsの物足りなさだ。以下にGSAのHSPAの図を載せるが
HSPAはMIMOや多値変調方式、デュアルキャリアなどを採用し、168Mbpsまで比較的容易に速度を拡張させることが可能だ(HSPA+、もしくはHSPA evolutionと呼ばれる)。しかし、今回は14.4Mbpsどまり、ということだ。ソフトバンクは42Mbpsをうたっており、この制約はiPhone側にある可能性が高い(裏はとれていないので、推測の域をでない)。

アップルサイドとしても、本気のiPhoneはやはり『5』となると伺える(まぁ番号を見れば、「4S」と「5」なので一目瞭然だが)。技術的なことを知る私としては、iPhone4SでせめてHSPA+、iPhone5でLTEを載せて欲しかったと感じるが、現実のものとならず、少し残念に思う。

ただ、故・ジョブズ氏の追悼の意味をこめて、また話題性もあって、iPhone4Sも前バージョンからの買い替え需要など、他の機種を圧倒して普及していくのだろう(キャリア間の移動は別として・・・)。


2011年10月1日土曜日

KDDI(au)、「iPhone5」参入の衝撃、を考える

KDDIのiPhone5の販売が判明した9月22日に、KDDIの株価は66万8千円の年初来最高値をつけ、その後低迷し9月30日には53万6千円と1ピークから0万円以上も下落した。確かにピークに達するまで上がり続けているため、情報がリークし判明とともに失速した、もしくは電池のリコールが相当響いた、などいろいろな解釈があるだろうが、さて実際にはiPhone5の参入はKDDIにさらには日本の携帯電話産業に何をもたらすのだろうか?(現段階ではiPhone5かiPhone4Sかどちらが不明だが、いずれにせよ、iPhoneをKDDIをだすインパクトは変わらないとして、考察を続ける)。少し時間を割いて考えてみたい。



実は同様の動きが米国で今年の初めにあった。ベライゾン・ワイヤレスのiPhone投入だ。アップル社のお膝元米国でも、最初はWCDMAのサービスをするAT&TでのみiPhoneは投入されていたが、今年初めCDMA2000系のサービスを行うベライゾン・ワイヤレスにも投入された。そして、米国第三番目のキャリア会社スプリントネクストテルでも投入される予定だ。

この時点で、同様のサービスを行うKDDIでも、リリースされるのでは?と噂された。つまり、今回の判明は関係者にはそれほどインパクトはなく、ある程度やっぱりかというものだ。アップルの成長の飽和を考えると、至極自然な流れだ。


では、業界関係者ではない消費者にとってのインパクトはどの程度あるのだろうか?今後iPhoneがKDDIからでたことで飛びつくと思われるユーザを、
① ドコモユーザ
② KDDIユーザ
③ ソフトバンク
④ イー・アクセス(イーモバイル)ユーザ
に分類し、以下考察してみたい。

① ドコモユーザ
そもそもKDDIのiPhoneを購入する動機は、
・ iPhoneが好き
・ KDDIが好き
のどちらかである。

ドコモユーザでiPhoneがどうしても欲しい、というユーザは既にソフトバンクへ移るか、日本通信のSIMで使用しているかどちらかであろう。つまり「iPhoneが好き」という動機で、KDDIのiPhoneを購入するドコモユーザはいなさそうだ。

「KDDIが好き」というユーザも既にKDDIに移行しているだろう。

② KDDIユーザ
やはり、「iPhoneが好き」というユーザは既にソフトバンクなどに移っていただろう。現在KDDIユーザで折角KDDIからiPhoneがでるのだから使ってみようかな・・・という消極的購買者は確かに存在するだろう。

③ ソフトバンクユーザ
現在ソフトバンクでiPhoneを使用していてネットワークの質などに不満のあるユーザはKDDIのiPhoneを購入する可能性はある。ただ、ソフトバンクユーザは比較的価格弾力性に敏感な若い層であり、現在のソフトバンク同士通話無料などの魅力的なサービスや、iPhone解約時の9975円が気になってなかなか解約できないだろう。

その上、あの孫さんのことだ、KDDIへユーザが流れる策を、近々打ってくるに違いない。

また、ウィルコムユーザはiPhone、スマートフォンには基本的に興味を示さないのは自明であろう。

④ イー・アクセスユーザ
ここのユーザはデータ通信のヘビーユーザが多い。iPhoneのリリースはあまり関係ないと考えがちだが、iPhone5はテザリングができる可能性が濃厚だ。そうした場合、iPhoneに買い換えることはありえるだろう。しかも、ソフトバンクではなく、ネットワークの安定したKDDIに、という形だ。しかし、テザリングだけに興味があるなら、他の端末でもOKということになるので、やはり、iPhoneが好きでテザリング機能も使用したい、という2つの条件がそろったユーザが移行することになり、その数は微小である、と考える。

総じて考えると、
・ 現在KDDIのユーザでiPhoneに少し興味のあるユーザ
・ ソフトバンクiPhoneユーザでソフトバンクのネットワークに不満があり、解約金、他の特典を差し置いてまで、KDDIに変更したい、というユーザ
・ 現在イー・アクセスユーザでヘビーデータ通信ユーザでiPhoneに興味があるユーザ
となる。いずれも、その数は微小であり、あまりKDDIがiPhoneをリリースするインパクトはない(もちろん話題性はあるが・・・)と結論づけることができる。


アップルは厳しい条件をキャリア会社に押し付ける、と言われる。KDDIがiPhoneを過大評価しすぎて(アップルの成長を考えれば自然の流れだったので)、厳しい契約を交わしていないことを、日本人として祈るところだ。


※ あくまでも、個人的な見解・考察です。

IEEE系の規格に関して

本ブログはLTE(ドコモでいうところのクロッシィ)を中心にした無線通信に関して言及するのが基本的には目的だ。ただ、競争相手を知ることは重要であるので、無線LAN(WiFi)に代表されるIEEE系の規格についてここでみていきたい。 

現在、IEEE系の規格で、活動的なのは、WiMAXのIEEE802.16系と、無線LANのIEEE802.11系、そして、Zigbeeなども含む近距離無線通信の802.15系であろう。

 本記事では、全てに関して言及するとかなり長文になるため、802.11系の規格に関してのみ触れ、また802.11といっても、拡張仕様がかなりあるため、ここではかなり簡単な説明文のみにとどめたい。



802.11 – 無線LAN( PHY&MAC)
まずは全ての大元となる、802.11の説明です。
802.11は、PHYとMACのみの規格です。MAC では CSMA/CA (Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance) プロトコルを使用します。このプロトコルはauthentication, association, reassociation, encryptionおよび電力制御を含みます。周波数は2.4G~2.4835GHzで、赤外線通信も規定されています。

周波数ホッピング拡散(FHSS)の場合にはGFSK変調が使用され、データレートは1Mbpsまでです。オプションで、4レベルGFSKの2Mbpsも用意されています。直接拡散(DSSS)の場合は、DBPSKが用いられ、データレートは1Mbpsまでです。DQPSKでは2Mbpsまであがります。赤外線通信では16パルス変調 (16-PPM)が用いられると1 Mbps、64-PPM で2 Mbpsまでレートが上がります。



802.11a – 5GHz帯での高速通信
以下拡張仕様の説明です。まずは11a。
802.11a は、802.11の拡張版で、5GHz帯のより高速な通信を実現する規格です。OFDMが使用され、6, 9, 12, 18, 24, 36, 48, 54 Mbpsのデータレートを実現します。6, 12 , 24 Mbps は全ての 802.11a デバイスで必須となります。 802.11a OFDM システムは、 52のサブキャリアを使用し (4 パイロットサブキャリア+ 48 データサブキャリア)、要求するデータレートによって、各サブキャリアの変調方式がBPSK, QPSK, 16 QAM,  64 QAMと拡張されます。たとえば 54 Mbpsの場合は、64 QAM変調を使用します。

周波数帯は5 GHz のU-NIIバンド帯で、5.15-5.25, 5.25-5.35, 5.725-5.25 GHzの300MHzを使用します。合計12個の 20MHz チャンネル+ガードバンドになります。 それぞれの U-NII バンドはMAXの出力電力が異なります。これは、FCCの規制に準拠するためです。このあたりの周波数はそれほど使われていないため、干渉波少ないのも特徴です。



802.11b – 2.4 GHZバンドの高速通信拡張
802.11b は、 802.11の追加です。目的はデータレートを802.11の1もしくは2Mbpsから5.5~ 11 Mbpsにあげることです。そのため、 8 チップの CCK (Complementary Code Keying) 変調が使用されます。 チップレートは常に11 MHz で、802.11と同じ帯域が使用されます。

また、オプションが2つ用意されています。一つ目は、PBCC (Packet Binary Convolution Coding)変調方式で、畳み込み符号が使用され、パフォーマンスが改善されています。もう一つは、2, 5.5, 11 Mbpsのデータレートで使用され、PLCPプリアンブルのサイズを小さくします。このオプションではショートプリアンブルが使用され、より高速な通信が実現できます。



802.11c – 802.11 MAC とのブリッジ– 802.1d の補足
802.11c は、802.11フレームをサポートする802.1d の補足です。



802.11d – 国際ローミング拡張
802.11では、6つの規制範囲のみ規定されています。 802.11d では、802.11がこれらの範囲を超えて使用できるように追加されています。まずアクセスポイントはマルチドメインの属性をSTAに運びます。国情報なども使用されます。 802.11d では以下の2つのメリットがあります。
・ 異なる国でハードウェアを変更する必要がない。
・ 異なる規制範囲でローミングが可能。


802.11e – QoS改善のため、MACを拡張
802.11e はプロトコルの効率化のために、またアプリケーションが十分対応できるように、MAC層を拡張しています。802.11 MACでは、DCF (Distributed Coordination Function) と PCF (Point Coordination Function)が規定され、個人のSTAのアクセスが調整されていました。

しかし、リアルタイム性を要求されるアプリケーションや多くのSTAが見る環境では不十分とされていました。

そのため、802.11eで拡張DCFと拡張PCF(実際はHCFと呼ばれますが)を規定します。これは、トラフィッククラス(TC)を使用し、アプリケーションの優先順位を決定します。メールは優先順位が低く、VoIPは優先順位が高いです。EDCFは、複数のアプリケーションが同時に使用される時に有効です。HC(hybrid coordinator)はQoSにより送信機会を与えるSTAで使用されます。


802.11f – ローミングのため、アクセスポイントの相互接続性を改善
802.11では、PHY と MAC 層仕様が無線LAN用として規定され、APやDSの基本概念も含まれる。しかし、無線LANの導入に関しては記述はありませんでした。

802.11f では、アクセスポイントの相互接続性に関してIAPP (Inter-Access Point Protocol)をします。共通DSでの相互接続に関しても含まれます。このプロトコルはTCP/IP または UDP/IPを使用し、AP間でIAPPパケットを運びます。また、ローミング時間を改善するため、近隣のAPへSTA情報を送るキャッシュの仕組みに関しても規定されています。


802.11g – 2.4 GHz帯におけるさらなる高速通信
11aの5GHzよりも電波伝播特性のより2.4GHzにおいてさらなる高速通信を目指して策定されています。また後方互換性も確保しています。必須モードとしては、11bCCKのERP-DSSS/CCK と ERP-OFDM そして 11aです(マイナーチェンジはありますが)。オプションとして、ERP-PBCC と DSSS-
OFDMがあります。  ERP-PBCC は11bPBCCの拡張で256ステートPBCCを使用し、22および33Mbpsを実現します。DSSS-OFDMは、OFDMでDSSSプリアンブルを使用します。データレートは、6 ~ 54 Mbpsが規定されています。


802.11h – 欧州の5GHz帯のダイナミック周波数選択(DFS)と送信電力マネジメント(TPC)の拡張
802.11h はスペクトラムマネイジド802.11aとして規定されます。これは欧州の5GHz帯の規制が送信電力制御(TPC)を要求しているためです。衛星通信に配慮してのことです。またDFS(dynamic frequency selection) も規定されています。これはレーダシステムを配慮してのことです。

ちなみにDFSはチャネル内のパワーをモニタリングし、レーダシステムが使用されているかチェックし、もし使用されているようなら他のリソースを割り当てる機能です。


802.11i – MAC セキュリティ拡張
802.11は セキュリティのためにWEP(Wired Equivalent Privacy)を使用します。 WEPは幾つかの欠点によりその信頼性に疑問の声がありました。WEPのよく知られる問題としては40bitのエンクリプション(encryption )キーがあります。これは、キー長さが短いため、ハッカーに狙われやすくなります。

802.11iでは、2つのセキュリティ方法を規定しています。一つ目は、TKIP(Temporal Key Integrity Protocol )と呼ばれるもので、レガシーデバイスとの互換性を考慮したものです。これは128bitキーを使用し、パケット毎にキーを変更します。二つ目は、CCMP(Counter mode with Cipher block chaining Message authentication code Protocol)です。これも128bitのキーを使用し、AES(advanced encryption standard )のCCMモードとなります。AESは、FIPS Pub (Federal
Information Processing Standards Publications) 197で規定されています。


802.11j – 日本における4.9 GHz - 5 GHzでの運用
日本で4.9と5.0GHz帯で使用できるよう802.11aを改版したもの。帯域外輻射とスプリアスに関して変更。また、10MHzのチャネルも追加されています。これはハーフレートのクロックを使用するためデータレートも半分(3, 4.5, 6, 9, 12, 18, 24 , 27Mbps)。


802.11K – RRM (RADIO RESOURCE MEASUREMENT) 拡張
802.11k では、より効率的にリソースを使用し、システム全体のスループットを向上するようRRMが規定されています。これまでは信号の強さだけをみてアクセスしていましたが、11kではリソースの空き状況もみて、アクセスに行きます。


802.11l – 使用されていません。
802.11l と 802.11i が間違えやすいため、使用されていません。



802.11m 802.11の修正版
より明確に、わかりやすく802.11を修正しドキュメント化されています。


802.11n 100Mbps以上を目指し、PHY および MAC を拡張
MIMO、パケットアグリゲーション、40MHz帯域幅、OFDMなどを導入。


802.11p – 自動車での無線アクセス(Wireless Access in Vehicular Environments (WAVE))
802.11p は路車間、もしくは車車間の通信を規定するものです。1kmより短い見通し通信を想定しています。いろいろなアプリケーションが想定されていますが、メインは車同士の衝突防止や緊急信号の送信などです。周波数は、5.85~5.925 GHzの範囲が使用されます。米国では7つの10MHzチャネルと、2つの20MHzオプションチャネルが規定されています。

OFDMで52サブキャリアのうち48がデータ送信に使用されます。オプションの20MHzでは54Mbpsまで、10MHzでは27Mbpsまでデータレートがでます。

日本では、アナログTV停波後の700MHz帯が考えられています。欧米では5.8GHz帯が検討。






802.11r – IEEE 802.11 高速BSS(Basic Service Set)トランジション
高速ローミングを考え、STA、DSの切断時間を短縮する、というもの。



802.11s – IEEE 802.11 ESS(Extended Service Set) メッシュネットワーク
メッシュネットワークの規格化。無線LANのカバレッジの拡張とモビリティの向上を目的に規格化。
ホットポイントと呼ばれる中間ステーションの定義や、これをあまり使用しないような最短パスのアルゴリズムも記載されています。


802.11T – 802.11の性能評価環境の規定
無線LANのテスト仕様を規定。



802.11u – IEEE 802.11 外部ネットワークとの協調動作
携帯電話ネットワークを始めとする、他のネットワークとの協調動作に関して規定。


802.11v – 無線ネットワークマネジメント
802.11kを拡張し、より高いレイヤの完成度をあげたもの。BSS送信マネジメント、チャネルの利用および共存、対話、マルチキャスト対話、レポーティング、効率ビーコンメカニズム、プロクシARPアドバタイズメント、ロケーション、タイミング測定、スリープモードなどが規定



802.11w– WLAN MAC およびPHY 使用:保護されたマネジメントフレーム
802.11iが十分なセキュリティを確保していないと判断したため、規格化。
データインテグリティ、データオリジナルオーセンティフィケーション、リレイ保護など。



802.11y – 米国3650-3700 MHz の修正 
米国の3650 – 3700 MHz帯で802.11デバイスが使用できるように規格化。
·        新たな規制クラスの規定 ( 802.11jの拡張)
·        他の送信機のセンシング ( 802.11aの拡張)
·        送信電力制御 ( 802.11hの拡張)
·        ダイナミックな周波数の選択 ( 802.11hの拡張)


802.11z – ダイレクトリンクセットアップ
ダイレクトリンクセットアップ(DLS)に関しての仕様です。DLSは以前から存在していましたが、新しいDLSの仕様は、
・ アクセスポイントのアップグレードが不要であること、
・ パワー制御、
などが追加されました。





802.11aa – ビデオ送信ストリーム:  より安定したストリーミング実現のためMACを拡張 
オーディオ・ビデオストリーミングをより安定させたものにするために、MAC層の拡張をしています。緩やかな劣化などをしたり、中央で制御することなくBSS環境でより安定になったりしています。


802.11ac – 6GHz以下の周波数で、超高速スループットを実現するための拡張.
マルチステーションの最大スループット1Gbps、シングルステーションでは500MbpsのPHYおよびMACの機能拡張。2.4GHz帯を除く、6GHz帯で、後方互換性を伴い、5GHzのライセンスされていないバンドの802.11デバイスとの協調も規定されている。


802.11ad – 60 GHz帯における超高速スループットのための拡張
最大1Gbpsのスループット(MAC層で測定時)を、60GHz帯で実現するために、802.11nを拡張。IEEE 802.15.3cシステムとの共存も目指す。


802.11ae – マネジメントフレームの優先順位 
クラスや優先順位を考えたフレームマネジメント。


802.11af – TV ホワイトスペース
基本的に米国のTVホワイトスペースを考えた規格。
PHYでは、5, 10, 20 MHz のOFDMチャネルが使用される予定。また、このバンドでは無線マイクも使用されているので、この保護も仕様に盛り込まれている。


※ 用語などは以下のリンクがわかりやすいかと思う。
http://www.isc.kyutech.ac.jp/kouhou/kouho16/wireless/2-2.html