2011年7月12日火曜日

TD-LTEサービスに関する市場状況

GSAの6月のレポートにTD-LTEの状況がまとめられていた。こちらをさらにまとめ以下に記す。


[オーストラリア]
WiMAXオペレータVividがTD-LTEトライアルを2010年12月から二ヶ月間シドニーで実施。2012年までに商用化を目指す。

NBN Co
固定無線TD-LTEを2.3GHz帯で行う予定。場所は郊外の数箇所。

[中国]
チャイナモバイルが1000基地局以上を設置した大規模トライアルを
実施。2012年には商用化予定。

[デンマーク]
Hutchison 3が2.6GHz帯の周波数を取得しLTE FDD/TDD双方サービスを計画。

[フランス]
orangeが
10MHz帯でFDD/TDD双方のトライアルを実施。これを2010年には20MHzに拡大。??????????2010?5??20MHz????

[ドイツ]
E-plusはGTIのメンバ。2.6GHz帯でTD-LTEのトライアル予定。

[インド]
RIL2011年内にTD-LTEサービス開始を予定。Bharti AirtelはTD-LTEをコミットメント。GTIメンバ。クアルコムインディアやTikona DigitalもTD-LTEをコミットメント。

[アイルランド]
2010年6月TD-LTEの試験を終了。

[日本]
ソフトバンクが2.6GHz帯にてTD-LTEを検討。GTIメンバ。

[マレーシア]
WiMAXオペレータPacket Networksが既存のWiMAX網にオーバレイする形でTD-LTEを検討。Asiaspaceも2.3GHz帯のTD-LTEを検討。

[オマーン]
OmantelがTD-LTE試験を2010年7月と2011年に実施。アラブで初のGTIメンバ。

[ポーランド]
Aero2が2.6GHz帯でTD-LTE試験を実行予定。2011年商用化。GTIメンバ。

[ロシア]
WiMAXオペレータYotaが2.3-2.4GHz帯のTD-LTEサービスを計画。

[スウェーデン]
Hutchison 3 が2.6GHz帯でTD-LTEとFDDのサービスを計画。

[台湾]
CHTは、2.6GHz帯でTDD/FDDともに試験を完了。
FarEasToneとチャイナモバイルは2010年にTD-LTEに関して共同試験。WiMAXオペレータはWiMAXの人口カバー率70%を超えた際にTD-LTEに切り替えることを模索。

[USA]
クリアワイヤは3GPPに2496~2690 MHz帯のTD-LTE仕様化を要求。
GTIメンバ。


と、TD-LTEに関しても市場規模は非常に大きそうだ。

2.6GHz帯がよく使われていることもひとつの特徴と言えそうだ。

韓国でもLTEサービス開始!

韓国でもLTEサービスが開始された。

・SKテレコム
・LG U+
の2オペレータで同時に7月1日付けだ。両オペレータともまずはソウル市内のみということだが、徐々に拡大していくということだ。

SKテレコムは800MHz帯を使いまずはドングルのみのリリースだ。しかし、2011年9月にはスマートフォンがリリースを計画しているという。タブレット型もその後リリース予定という。また、2013年にはLTE-advancedのサービスも検討しているということ。

また、LG U+では、2012年中旬までには韓国全土をカバーできるようにする、とのこと。

また、もうひとつのオペレータKTも2011年11月にLTEサービスを開始させる予定とのこと。



近年、中国勢が目立ったこの業界だが、サムソン・LG・パンテックを抱える韓国勢もLTEに関しては鼻息は荒い。

2011年7月8日金曜日

3GPP RAN1-5の説明 他

3GPPのRAN1やRAN5などの言葉を聴いたことがあると思うが、これらに関して以下にまとめておく。

まず、3GPPの中に技術仕様をまとめるTSG(technical specification group)というグループがある。この中にさらに各ワークグループ(WG)があり、これらをTSG RAN WG1などと呼んだりする。一般的には「WG」を省略しRAN1(ランワン)などと呼ばれたりする。

実はTSGの中にはRAN以外に
・TSG GERAN
・TSG SA
・TSG CT
(・TSG RAN)
などもある。RANはradio access networkの略でありLTEなどの無線技術を扱うワーキンググループというわけだ。以下に各ワーキンググループの役割をまとめておく。

TSG RAN WG1(RAN1) 無線レイヤ1仕様
TSG RAN WG2(RAN2) 無線レイヤ2および3RR仕様
TSG RAN WG3(RAN3) Iub Iur および Iu 仕様 - UTRAN O&M 要件
TSG RAN WG4(RAN4) 無線性能およびプロトコル仕様 - RF パラメータおよびBS コンフォーマンス試験
TSG RAN WG5(RAN5) モバイル端末コンフォーマンス試験

である。また、これらは3ヶ月に一度定期的に開かれるが、非定期に開かれるアドホックワーキンググループなどもある。プレナリ(plenary)と呼ばれる全WGが集まったものもある。



詳細は3GPPの以下のサイトが参考になる。
http://www.3gpp.org/Specification-Groups

3GPP RAN/SA/CT の違い

SA - Service & Systems Aspects
RAN - Radio Access Network
CT - Core Network & Terminals

である。リリース9/10の改版がよりサービスについての改版であることがわかる(前回の記事を参照のこと)。。

3GPPリリース10の機能概要

3GPPリリース10の機能概要が6月に改版されている。以下で詳細を確認いただきたいが、
http://www.3gpp.org/ftp/Information/WORK_PLAN/Description_Releases/

概要としては以下だ。


4 SA1 / SA2 Features
5 SA3 Features
6 SA4 Features
7 SA5 Features
8 CT Features
9 UTRA Features



10 LTE Features

10.1 Carrier Aggregation for LTE
10.2 Enhanced Downlink Multiple Antenna Transmission for LTE
10.3 Uplink Multiple Antenna Transmission for LTE
10.4 Relays for LTE (LTE_Relay)
10.4.1 Security for LTE Relay Nodes (Stage 2)
10.5 Enhanced ICIC for non-CA based deployments of heterogeneous networks for LTE
10.6 LTE TDD in 2600MHz for US
10.7 Adding 2 GHz band LTE for ATC of MSS in North America
10.8 Adding L-Band LTE for ATC of MSS in North America
10.9 LTE Self Optimizing Networks (SON) enhancements
10.10 Further enhancements to MBMS for LTE


11 UTRA, LTE Features
12 UTRA, LTE, GERAN Features
13 GERAN Features

ちなみに

SA - Service & Systems Aspects
RAN - Radio Access Network
CT - Core Network & Terminals

である。

LTE-advancedに関してもやはりLTEの改版といった技術革新といってよいかと思う。

3GPPリリース9の機能概要

3GPPよりリリース9の機能概要のドキュメントが6月に更新されている。

詳細は以下を参照していただきたいが、
http://www.3gpp.org/ftp/Information/WORK_PLAN/Description_Releases/
章のみ記載すると、

4 Enhanced Home NodeB / eNodeB
5 User Data Convergence
6 Public Warning System
7 IMS Emergency Calls over GPRS and EPS
8 LCS for LTE and EPS
9 MBMS support in EPS / LTE
10 SA1 Features
11 SA2 Features
12 SA3 Features
13 SA4 Features
14 SA5's Operations, Administration, Maintenance and Provisioning (OAM&P)
15 CT Features
16 Improvements of the Radio Interface
17 RAN improvements
18 LTE improvements
19 Self-Organizing Networks
20 GERAN Features


となる。機会があれば細かく本ブログでも紹介していきたい。

LTEにおけるUE カテゴリ

UEのカテゴリに関して質問をうける。3GPPのリリース8にて規定されているカテゴリを以下にまとめる。

「カテゴリ1」
ピークデータレート[Mbps]: DL 10, UL 5
変調方式: DL QPSK/16QAM/64QAM, UL QPSK/16QAM
マルチアンテナ: SISOのみ

「カテゴリ2」
ピークデータレート[Mbps]: DL 50, UL 25
変調方式: DL QPSK/16QAM/64QAM, UL QPSK/16QAM
マルチアンテナ: 2x2MIMOが必須

「カテゴリ3」
ピークデータレート[Mbps]: DL 100, UL 50
変調方式: DL QPSK/16QAM/64QAM, UL QPSK/16QAM
マルチアンテナ: 2x2MIMOが必須

「カテゴリ4」
ピークデータレート[Mbps]: DL 150, UL 50
変調方式: DL QPSK/16QAM/64QAM, UL QPSK/16QAM
マルチアンテナ: 2x2MIMOが必須

「カテゴリ5」
ピークデータレート[Mbps]: DL 300, UL 75
変調方式: DL QPSK/16QAM/64QAM, UL QPSK/16QAM/64QAM
マルチアンテナ: 2x2MIMOおよび4x4MIMOが必須


カテゴリ5では4x4MIMOが必須のようだが、これはタブレット型端末でないと不可能であろう・・・。

eMBMS / MFSFN マルチキャストサービス

LTE リリース9の仕様にてeMBMS / MFSFNなるものが定義されているようだ。

MBMSはMultimedia Broadcast Multicast Serviceの略で3GPP リリース6で既に定義されている、マルチキャストの機能だ。商用化されたサービスは未だないようだが、このLTEの技術にて(リリース6ではWCDMAの技術)特定ユーザへの放送系サービスがにわかに高まっているようだ。

http://en.wikipedia.org/wiki/Multimedia_Broadcast_Multicast_Service

このMBMSをエンハンスしたものが今回のeMBMSだが、大きくはMBSFNという概念が導入された点が特徴であろう。

このMBSFNのSFNはSingle Frequency Networkの略で放送の分野では既に使用されている技術だ。この技術の効能は、同時刻に同周波数のリソースをいくつかの基地局で使用するため、システムのリソース効率があがる、というものだ。

逆に同時刻に同周波数で使用することは干渉を発生させる、ということであり、携帯端末はいくつかの基地局からの信号をマルチパスフェージングかのように認識する(各基地局からの伝播遅延が異なるため)。LTEではOFDMの信号が使われているためマルチパスがCP(サイクリック・プレフィックス)より小さければ干渉とならない。そのため、MBMSを行う際にはCP長を長くすることも行われる。またMBSFN専用のリファレンス信号も用意されており、CP長より長い遅延波に対しては、パス分離して処理できるのかもしれない。

いずれにせよ、LTE端末ではデータ通信のみではなく、マルチキャストサービスもうけられることが現実的になってきており、スカパーなどに代表される会員制コンテンツ配信サービスなどもモバイル環境で享受できるようになっていくであろう。

本当にすごい時代だし、そういったサービスを早くうけてみたいものだ。

2011年7月7日木曜日

インターラット( inter-RAT, IRAT ) ハンドオーバ

以前記事で音声通信のためのCSFBの記事を書いたが、ハンドオーバとの違いなどについて質問をいただいた。ちょっとここで他ネットワーク間のハンドオーバ関連の技術に関してまとめたい。

3GPPでは以下の4つを定義している。
(1) インターラットハンドオーバ(inter-RAT handover)
(2) ネットワーク補助セル変更(network assisted cell change: NACC)
(3) 単一無線音声通信継続(single-radio voice call continuity: SR-VCC)
(4) サーキッド・スイッチ・フォールバック( Circuit switched fallback: CSFB)

また、現在のネットワークには以下の2種類が存在する
・ 回線交換( circuit switch )    → 回線を占有して通信を行う(GSM,WCDMA,CDMA2000)
・ パケット交換( packet switch )   → パケット方式で回線を共有して通信を行う(GPRS,WCDMA,EVDO,LTE)

この2種類のネットワークを押さえ、上の4つの他ネットワーク間のハンドオーバについて説明する。

(1) インターラットハンドオーバ(inter-RAT handover)
まず、RATはradio access technologyの略でインターラットとは「他ネットワーク間」ということになる。例えばLTE→WCDMA、LTE→GSM、LTE→EVDOといった具合だ。重要なのは「パケットデータ通信」でのハンドオーバということだ。

(2) ネットワーク補助セル変更(network assisted cell change: NACC)
これはLTEからGSMへのパケットデータ通信のハンドオーバで、LTEのパケット方式からGSMの回線交換方式へハンドオーバする際の呼び名である。

(3) 単一無線音声通信継続(single-radio voice call continuity: SR-VCC)
これは音声通信のハンドオーバでPS(packet switched)からCS(circuit switched)領域への移行となる。(4)のCSフォールバックと異なる点はPS領域でも音声のサービス(VoIP)を行っている点である。

(4) サーキッド・スイッチ・フォールバック( Circuit switched fallback: CSFB)
これは以前の記事でも書いたが音声通信をレガシーのCS回線の一任させる方法である。

まとめると、

(1) インターラットハンドオーバ(inter-RAT handover)
データ通信:PSからPS
(2) ネットワーク補助セル変更(network assisted cell change: NACC)
データ通信:PSからCS
(3) 単一無線音声通信継続(single-radio voice call continuity: SR-VCC)
音声通信:PSからCS
(4) サーキッド・スイッチ・フォールバック( Circuit switched fallback: CSFB)
音声通信:CSのみ
データ通信:PSのみ

という形になるだろう。

う~ん、複雑だ・・・。

「以下の資料が役にやつ」
http://www.motorola.com/web/Business/Solutions/Industry%20Solutions/Service%20Providers/Network%20Operators/LTE/_Document/Static%20Files/InterTech%20Mobility%20White%20Paper.pdf