2011年10月1日土曜日

IEEE系の規格に関して

本ブログはLTE(ドコモでいうところのクロッシィ)を中心にした無線通信に関して言及するのが基本的には目的だ。ただ、競争相手を知ることは重要であるので、無線LAN(WiFi)に代表されるIEEE系の規格についてここでみていきたい。 

現在、IEEE系の規格で、活動的なのは、WiMAXのIEEE802.16系と、無線LANのIEEE802.11系、そして、Zigbeeなども含む近距離無線通信の802.15系であろう。

 本記事では、全てに関して言及するとかなり長文になるため、802.11系の規格に関してのみ触れ、また802.11といっても、拡張仕様がかなりあるため、ここではかなり簡単な説明文のみにとどめたい。



802.11 – 無線LAN( PHY&MAC)
まずは全ての大元となる、802.11の説明です。
802.11は、PHYとMACのみの規格です。MAC では CSMA/CA (Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance) プロトコルを使用します。このプロトコルはauthentication, association, reassociation, encryptionおよび電力制御を含みます。周波数は2.4G~2.4835GHzで、赤外線通信も規定されています。

周波数ホッピング拡散(FHSS)の場合にはGFSK変調が使用され、データレートは1Mbpsまでです。オプションで、4レベルGFSKの2Mbpsも用意されています。直接拡散(DSSS)の場合は、DBPSKが用いられ、データレートは1Mbpsまでです。DQPSKでは2Mbpsまであがります。赤外線通信では16パルス変調 (16-PPM)が用いられると1 Mbps、64-PPM で2 Mbpsまでレートが上がります。



802.11a – 5GHz帯での高速通信
以下拡張仕様の説明です。まずは11a。
802.11a は、802.11の拡張版で、5GHz帯のより高速な通信を実現する規格です。OFDMが使用され、6, 9, 12, 18, 24, 36, 48, 54 Mbpsのデータレートを実現します。6, 12 , 24 Mbps は全ての 802.11a デバイスで必須となります。 802.11a OFDM システムは、 52のサブキャリアを使用し (4 パイロットサブキャリア+ 48 データサブキャリア)、要求するデータレートによって、各サブキャリアの変調方式がBPSK, QPSK, 16 QAM,  64 QAMと拡張されます。たとえば 54 Mbpsの場合は、64 QAM変調を使用します。

周波数帯は5 GHz のU-NIIバンド帯で、5.15-5.25, 5.25-5.35, 5.725-5.25 GHzの300MHzを使用します。合計12個の 20MHz チャンネル+ガードバンドになります。 それぞれの U-NII バンドはMAXの出力電力が異なります。これは、FCCの規制に準拠するためです。このあたりの周波数はそれほど使われていないため、干渉波少ないのも特徴です。



802.11b – 2.4 GHZバンドの高速通信拡張
802.11b は、 802.11の追加です。目的はデータレートを802.11の1もしくは2Mbpsから5.5~ 11 Mbpsにあげることです。そのため、 8 チップの CCK (Complementary Code Keying) 変調が使用されます。 チップレートは常に11 MHz で、802.11と同じ帯域が使用されます。

また、オプションが2つ用意されています。一つ目は、PBCC (Packet Binary Convolution Coding)変調方式で、畳み込み符号が使用され、パフォーマンスが改善されています。もう一つは、2, 5.5, 11 Mbpsのデータレートで使用され、PLCPプリアンブルのサイズを小さくします。このオプションではショートプリアンブルが使用され、より高速な通信が実現できます。



802.11c – 802.11 MAC とのブリッジ– 802.1d の補足
802.11c は、802.11フレームをサポートする802.1d の補足です。



802.11d – 国際ローミング拡張
802.11では、6つの規制範囲のみ規定されています。 802.11d では、802.11がこれらの範囲を超えて使用できるように追加されています。まずアクセスポイントはマルチドメインの属性をSTAに運びます。国情報なども使用されます。 802.11d では以下の2つのメリットがあります。
・ 異なる国でハードウェアを変更する必要がない。
・ 異なる規制範囲でローミングが可能。


802.11e – QoS改善のため、MACを拡張
802.11e はプロトコルの効率化のために、またアプリケーションが十分対応できるように、MAC層を拡張しています。802.11 MACでは、DCF (Distributed Coordination Function) と PCF (Point Coordination Function)が規定され、個人のSTAのアクセスが調整されていました。

しかし、リアルタイム性を要求されるアプリケーションや多くのSTAが見る環境では不十分とされていました。

そのため、802.11eで拡張DCFと拡張PCF(実際はHCFと呼ばれますが)を規定します。これは、トラフィッククラス(TC)を使用し、アプリケーションの優先順位を決定します。メールは優先順位が低く、VoIPは優先順位が高いです。EDCFは、複数のアプリケーションが同時に使用される時に有効です。HC(hybrid coordinator)はQoSにより送信機会を与えるSTAで使用されます。


802.11f – ローミングのため、アクセスポイントの相互接続性を改善
802.11では、PHY と MAC 層仕様が無線LAN用として規定され、APやDSの基本概念も含まれる。しかし、無線LANの導入に関しては記述はありませんでした。

802.11f では、アクセスポイントの相互接続性に関してIAPP (Inter-Access Point Protocol)をします。共通DSでの相互接続に関しても含まれます。このプロトコルはTCP/IP または UDP/IPを使用し、AP間でIAPPパケットを運びます。また、ローミング時間を改善するため、近隣のAPへSTA情報を送るキャッシュの仕組みに関しても規定されています。


802.11g – 2.4 GHz帯におけるさらなる高速通信
11aの5GHzよりも電波伝播特性のより2.4GHzにおいてさらなる高速通信を目指して策定されています。また後方互換性も確保しています。必須モードとしては、11bCCKのERP-DSSS/CCK と ERP-OFDM そして 11aです(マイナーチェンジはありますが)。オプションとして、ERP-PBCC と DSSS-
OFDMがあります。  ERP-PBCC は11bPBCCの拡張で256ステートPBCCを使用し、22および33Mbpsを実現します。DSSS-OFDMは、OFDMでDSSSプリアンブルを使用します。データレートは、6 ~ 54 Mbpsが規定されています。


802.11h – 欧州の5GHz帯のダイナミック周波数選択(DFS)と送信電力マネジメント(TPC)の拡張
802.11h はスペクトラムマネイジド802.11aとして規定されます。これは欧州の5GHz帯の規制が送信電力制御(TPC)を要求しているためです。衛星通信に配慮してのことです。またDFS(dynamic frequency selection) も規定されています。これはレーダシステムを配慮してのことです。

ちなみにDFSはチャネル内のパワーをモニタリングし、レーダシステムが使用されているかチェックし、もし使用されているようなら他のリソースを割り当てる機能です。


802.11i – MAC セキュリティ拡張
802.11は セキュリティのためにWEP(Wired Equivalent Privacy)を使用します。 WEPは幾つかの欠点によりその信頼性に疑問の声がありました。WEPのよく知られる問題としては40bitのエンクリプション(encryption )キーがあります。これは、キー長さが短いため、ハッカーに狙われやすくなります。

802.11iでは、2つのセキュリティ方法を規定しています。一つ目は、TKIP(Temporal Key Integrity Protocol )と呼ばれるもので、レガシーデバイスとの互換性を考慮したものです。これは128bitキーを使用し、パケット毎にキーを変更します。二つ目は、CCMP(Counter mode with Cipher block chaining Message authentication code Protocol)です。これも128bitのキーを使用し、AES(advanced encryption standard )のCCMモードとなります。AESは、FIPS Pub (Federal
Information Processing Standards Publications) 197で規定されています。


802.11j – 日本における4.9 GHz - 5 GHzでの運用
日本で4.9と5.0GHz帯で使用できるよう802.11aを改版したもの。帯域外輻射とスプリアスに関して変更。また、10MHzのチャネルも追加されています。これはハーフレートのクロックを使用するためデータレートも半分(3, 4.5, 6, 9, 12, 18, 24 , 27Mbps)。


802.11K – RRM (RADIO RESOURCE MEASUREMENT) 拡張
802.11k では、より効率的にリソースを使用し、システム全体のスループットを向上するようRRMが規定されています。これまでは信号の強さだけをみてアクセスしていましたが、11kではリソースの空き状況もみて、アクセスに行きます。


802.11l – 使用されていません。
802.11l と 802.11i が間違えやすいため、使用されていません。



802.11m 802.11の修正版
より明確に、わかりやすく802.11を修正しドキュメント化されています。


802.11n 100Mbps以上を目指し、PHY および MAC を拡張
MIMO、パケットアグリゲーション、40MHz帯域幅、OFDMなどを導入。


802.11p – 自動車での無線アクセス(Wireless Access in Vehicular Environments (WAVE))
802.11p は路車間、もしくは車車間の通信を規定するものです。1kmより短い見通し通信を想定しています。いろいろなアプリケーションが想定されていますが、メインは車同士の衝突防止や緊急信号の送信などです。周波数は、5.85~5.925 GHzの範囲が使用されます。米国では7つの10MHzチャネルと、2つの20MHzオプションチャネルが規定されています。

OFDMで52サブキャリアのうち48がデータ送信に使用されます。オプションの20MHzでは54Mbpsまで、10MHzでは27Mbpsまでデータレートがでます。

日本では、アナログTV停波後の700MHz帯が考えられています。欧米では5.8GHz帯が検討。






802.11r – IEEE 802.11 高速BSS(Basic Service Set)トランジション
高速ローミングを考え、STA、DSの切断時間を短縮する、というもの。



802.11s – IEEE 802.11 ESS(Extended Service Set) メッシュネットワーク
メッシュネットワークの規格化。無線LANのカバレッジの拡張とモビリティの向上を目的に規格化。
ホットポイントと呼ばれる中間ステーションの定義や、これをあまり使用しないような最短パスのアルゴリズムも記載されています。


802.11T – 802.11の性能評価環境の規定
無線LANのテスト仕様を規定。



802.11u – IEEE 802.11 外部ネットワークとの協調動作
携帯電話ネットワークを始めとする、他のネットワークとの協調動作に関して規定。


802.11v – 無線ネットワークマネジメント
802.11kを拡張し、より高いレイヤの完成度をあげたもの。BSS送信マネジメント、チャネルの利用および共存、対話、マルチキャスト対話、レポーティング、効率ビーコンメカニズム、プロクシARPアドバタイズメント、ロケーション、タイミング測定、スリープモードなどが規定



802.11w– WLAN MAC およびPHY 使用:保護されたマネジメントフレーム
802.11iが十分なセキュリティを確保していないと判断したため、規格化。
データインテグリティ、データオリジナルオーセンティフィケーション、リレイ保護など。



802.11y – 米国3650-3700 MHz の修正 
米国の3650 – 3700 MHz帯で802.11デバイスが使用できるように規格化。
·        新たな規制クラスの規定 ( 802.11jの拡張)
·        他の送信機のセンシング ( 802.11aの拡張)
·        送信電力制御 ( 802.11hの拡張)
·        ダイナミックな周波数の選択 ( 802.11hの拡張)


802.11z – ダイレクトリンクセットアップ
ダイレクトリンクセットアップ(DLS)に関しての仕様です。DLSは以前から存在していましたが、新しいDLSの仕様は、
・ アクセスポイントのアップグレードが不要であること、
・ パワー制御、
などが追加されました。





802.11aa – ビデオ送信ストリーム:  より安定したストリーミング実現のためMACを拡張 
オーディオ・ビデオストリーミングをより安定させたものにするために、MAC層の拡張をしています。緩やかな劣化などをしたり、中央で制御することなくBSS環境でより安定になったりしています。


802.11ac – 6GHz以下の周波数で、超高速スループットを実現するための拡張.
マルチステーションの最大スループット1Gbps、シングルステーションでは500MbpsのPHYおよびMACの機能拡張。2.4GHz帯を除く、6GHz帯で、後方互換性を伴い、5GHzのライセンスされていないバンドの802.11デバイスとの協調も規定されている。


802.11ad – 60 GHz帯における超高速スループットのための拡張
最大1Gbpsのスループット(MAC層で測定時)を、60GHz帯で実現するために、802.11nを拡張。IEEE 802.15.3cシステムとの共存も目指す。


802.11ae – マネジメントフレームの優先順位 
クラスや優先順位を考えたフレームマネジメント。


802.11af – TV ホワイトスペース
基本的に米国のTVホワイトスペースを考えた規格。
PHYでは、5, 10, 20 MHz のOFDMチャネルが使用される予定。また、このバンドでは無線マイクも使用されているので、この保護も仕様に盛り込まれている。


※ 用語などは以下のリンクがわかりやすいかと思う。
http://www.isc.kyutech.ac.jp/kouhou/kouho16/wireless/2-2.html

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